第4話「占いと迷いの日々」

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 アプリを入れてから数日、通知が来るたび胸が高鳴った。
 段々と増えていく「いいね」の数。見ていると少しだけ自信が戻ってくる。
 電車の中や寝る前、色々な人のプロフィールを眺めるのが楽しかった。
 同年代で共通の趣味を持つ人、聞いたことのない職業の人、思わず笑ってしまう自己紹介文——。
 あきひろのことを考えて沈む時間が、少しだけ減ったような気がした。


 こうして新しい扉を開こうとしている。
 無理やりでも前に進めていると思った。

 ──そのはずだった。

 心の奥底では、まだ彼を手放せずにいた。
 あきひろにメッセージを再び送ることはない。
 それでも、既読のまま返事がないメッセージ画面を、気づけば何度も開いてしまう。
 ほんのわずかな変化や通知を期待して、無意味だとわかっていながら。

 


 そんなある日、仕事の休憩中、何気なくスマホで「音信不通 理由」と検索していた。
 すると画面に広告が出てきた。
 


 押すつもりはなかった。けれど、そのまま親指が画面をタップしていた。
 開いた先には「彼の本音をお伝えします」「復縁成功率◯%」といった、今の私に突き刺さる言葉が並んでいた。
 藁にもすがる思いで、そのまま会員登録をしてしまった。

 最初の鑑定で、優しい声の占い師が言った。
 「大丈夫、彼は今でもあなたのことを思っていますよ」
 その瞬間、張り詰めていた心がふっと緩み、涙が溢れた。


 それからというもの、占いは私の生活の一部になった。
 夜、不安になるとベッドに横になってスマホを耳に当てる時間が日課になる。
 どの占い師も口を揃えて同じことを言う——
 「あの人は必ず戻ってきます」

 アプリで新しい人を探しながらも、占いではあきひろのことを何度も聞いてしまう。
 矛盾した心を抱えたまま、それでも前に進もうとする自分。

 ──このままじゃ、何も変わらない。
 そう思った瞬間、小さな覚悟が胸の中で芽生えた。

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