
第7話「勢いで押したブロックボタン」
翌朝、スマホの通知を開くと、ケンゴさんからメッセージが届いていた。「昨日はありがとうございました。またお会いできたら嬉しいです」丁寧で誠実そうな文章。でも——私はまた会いたいとは思わなかった。悪い人じゃない。会話も普通にできた。それでも「何...

第6話「初めての映画デートと心の違和感」
「あれって、ケンゴさんだよね……?」待ち合わせ場所に立つ男性を見て、私は不安を覚えた。顔は確かにプロフィール写真の名残がある。けれど全体的に丸みを帯びていて、思わず胸の奥がざわついた。さっきの「顔が丸くなってるかも(笑)」というメッセージっ...

第5話「忘れられない彼を胸に、マッチングアプリで初めてのデート」
気付けば私は占いであきひろのことばかり聞いていた。「このままじゃ駄目だ」と心のどこかで分かっていたけれど、抜け出すのは想像以上に難しい。——もし新しい人を好きになれたなら、あきひろを忘れられるのだろうか。そう思って始めたマッチングアプリ。既...

第4話「占いと迷いの日々」
アプリを入れてから数日、通知が来るたび胸が高鳴った。 段々と増えていく「いいね」の数。見ていると少しだけ自信が戻ってくる。 電車の中や寝る前、色々な人のプロフィールを眺めるのが楽しかった。 同年代で共通の趣味を持つ人、聞いたことのない職業の...

第3話「新しい扉」
「マッチングアプリ、久しぶりだなあ」暗い部屋の中、スマホの画面がミキの顔を照らす。ひとり、その光を見つめながら呟いた。あきひろと出会ったのは、少しマイナーなアプリ。今度は有名どころでやってみようと、インストールボタンを押す。登録を進める指先...

第2話「さよなら、大好きだった人」
遠距離になってから、誕生日も記念日も「仕事があるから会えない」とだけ言われた。 会うときはいつも、あきひろが他の地方への出張のついでにミキの家へ寄るだけ。 どこかに出かけることもなく、家で過ごして終わる。 家で過ごしている間、彼は仕事の話ば...

第1話「31歳で迎えた冬」
「はぁ……。」 31歳の冬。帰宅ラッシュで混雑する電車内、右手のスマホ画面を見つめて小さくため息をついた。もう3日も既読がつかない。もしかしてブロックされたのかと不安になり、連絡拒否の設定を確認したが、そうではなかった。単に、私の送ったメッ...