気付けば私は占いであきひろのことばかり聞いていた。
「このままじゃ駄目だ」と心のどこかで分かっていたけれど、抜け出すのは想像以上に難しい。
——もし新しい人を好きになれたなら、あきひろを忘れられるのだろうか。
そう思って始めたマッチングアプリ。既に何人かとはメッセージを続けていて、画面に並ぶやり取りは、あきひろを失ってからの心の隙間を占いと一緒に埋めてくれていた。
その中に「ケンゴさん」という人がいた。
音楽関係の仕事をしているらしく、プロフィール写真は少しぼやけていたが、パーマがかった髪に筋肉質な印象。
メッセージを重ねるうち、彼もアニメや漫画が好きだと分かり、最近映画化されたスポーツ漫画の話で盛り上がった。
そしてある日、ケンゴさんから届いた一通のメッセージ。
「よかったら、一緒に映画行きませんか?」
きた。
メッセージの流れから、そろそろ誘われそうだと感じていたけれど、実際にその瞬間が訪れると心臓が跳ね上がる。
「ぜひ!行きましょう!」
思わずすぐに返信してしまった。
お互い都内在住ということもあり、新宿の映画館で会うことに。
さらに「せっかくだからランチしてからにしましょう」と提案してくれて、候補をいくつか出してくれた中から、イタリアンのお店に決まった。
そして迎えた当日。
待ち合わせの15分前、ケンゴさんからメッセージが届く。
「少し早めに着きました。〇〇で待ってますね」
「わかりました!あと10分くらいで着くと思います」と返すと、すぐにまたメッセージが。
「昨日お酒飲んだので顔が丸くなってるかも(笑)」
思わずクスリと笑ってしまい、緊張が少しだけほぐれた。
けれど——。
待ち合わせ場所に着いた私。
その場所にいる人を見て……思わず足が止まった。
コメント