第7話「勢いで押したブロックボタン」

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翌朝、スマホの通知を開くと、ケンゴさんからメッセージが届いていた。
「昨日はありがとうございました。またお会いできたら嬉しいです」

丁寧で誠実そうな文章。
でも——私はまた会いたいとは思わなかった。

悪い人じゃない。会話も普通にできた。
それでも「何かが違う」という気持ちが、心の奥に居座っている。

中途半端に関わり続ければ、お互いに時間を無駄にしてしまう。
そう思った瞬間、「もう、勢いでいい」と自分に言い聞かせた。

指先が画面に触れる。
——ブロックしますか?
確認の文字を見て、一瞬だけ迷いはあった。けれど、次の瞬間には押していた。

「次行こ、次!」
心の中でそうつぶやいた。

幸い、メッセージのやり取りをしている人は他にもたくさんいる。
画面に並ぶ通知の数だけ、新しい出会いの可能性はある。

──ただ、この時の私は気づいていなかった。
あきひろから連絡が来なくなって、私は少しおかしくなっていたのかもしれない。
自分も、人のことも、大切にできなくなっていたのだ。

そのことをはっきりと自覚するのは、もう少し先の話になる。

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